立読み歓迎! コラボプロジェクト

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漫画家 ✕ 原作者インタビュー
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『不運からの最強男』漫画家 中林ずん先生&原作者 フクフク先生へインタビュー!

『不運からの最強男』

Web小説投稿サイト「小説家になろう」に作品を投稿し、瞬く間に人気作品となった『不運からの最強男』。
ノベライズ&コミカライズが同時決定し、シリーズ累計100万部を突破した人気作品の魅力を漫画家、原作者それぞれの視点で語ってもらいました。

『不運からの最強男』のコミカライズ版の作画と小説版のイラストを担当されている漫画家の中林ずん先生にお話を伺います。

作画 中林ずん先生

作画
中林ずん先生

イラストレーター・漫画家として活動中。『東京軌道エレベーターガール 』で商業デビュー後、本作『不運からの最強男』のコミカライズと小説のイラストを担当。

今回の「立読み歓迎! コラボプロジェクト」でメトロ全線に『不運からの最強男』のまど上ポスターが掲出されることについて、率直にどのような気持ちですか?

とても光栄なことだと思います。アシスタント時代は東京メトロによく乗っていたので、その電車内で自分がコミカライズを手がけた作品を見られるんだなぁ、と大変嬉しい気持ちです。多くの人の目に留まるものになったら嬉しいですね。

コミカライズ版を担当することが決まったときはどう感じましたか?

原作を読んでみて、素晴らしい作品だなと感じました。ちょうど別の連載が終わって「次の作品が決まるまで、しばらく時間がかかるだろうな……」と思っていたところに、この作品のコミカライズ版のお話をいただいたんです。初めての連載が終わったばかりだったので「私のことを知っている方がいるんだ」という驚きもありましたし、嬉しかったですね。

コミカライズするにあたって、文章で表現されたキャラクターや世界観を絵にしていくわけですが、どのように作り上げていったのでしょうか。

キャラクターデザインに関しては、原作者のフクフク先生からキャラクターの基礎となる性格や話し方、目の色や髪の色、身長などの情報をいただきました。そこに私が原作を読んだ印象を足して、デザインしていくという感じです。
キャラクターのデザインを作り込むことはとても好きなんですが、締め切りに間に合うように描き切れる作画コストにする、ということも意識して、キャラクターやその衣装、装飾品などを作っていきました。

中林先生のお仕事スペース。ここで『不運からの最強男』の漫画が生まれていく。「ネームを起こすときは小説の内容を一度抽出し、頭の中で簡単なアニメーションにしてから漫画に落とし込んでいきます」と中林先生。

中林先生のお仕事スペース

世界観や雰囲気づくりで心がけたことはありますか?

家族愛や家族の絆が強い作品なので、国や家族ごとにテーマカラーなどを決めて統一感が出るようにしました。例えば、主人公ジークベルトのいるアーベル家ですと、黒と赤を基調とした服装に統一したり、ひし形のような記号を3列に並べたマークがあるんですが、それを絶対に入れたりして、ユニフォームのようにしています。統一感が出るようにデザインしていく作業は楽しかったですね。

原作とコミカライズ版で内容が異なる部分もありますか?

小説と漫画だと、同じ本1冊でも表現できる量に差が出てしまうんですね。なので、なるべく全体の流れは原作と同じになるように心がけつつ、キャラクターの心情を折り込むことや読みやすさなどを考慮して、大幅に内容をカットすることもあります。そうした調整を行う際は、フクフク先生にも都度見ていただきながら進めています。

作品の中で描いていて楽しいキャラクターはいますか?

主人公の兄・アルベルトがいちばん好きなので、アルベルトを描くのは楽しいです。作画コストもよくて描きやすいですし(笑)。あとは、白虎のハクですね。描くのが難しくもあるんですが、かわいく描けると満足感が高いキャラクターです。

中林ずん先生のお気に入りは長兄のアルベルトと白虎のハク。どちらもジークベルトにとって大切な存在であり、彼らはジークを支えながら一緒に困難を乗り越えていく。

『不運からの最強男』
『不運からの最強男』

ハクを描くにあたって、動物を描く修業をしたとお聞きしました。

漫画などの長期的なもので動物を描くのが初めてでしたので、ちゃんとかわいいと思ってもらえる動物になるように頑張ろうと特に勉強しました。ハクは白虎なので虎をモデルにしているのですが、愛されキャラにしたかったので、リアルになりすぎないよう猫と足して割ってみるなど、いろいろ考えてデザインしました。

表現するのが難しいキャラクターはいますか?

かっこいい男性を描くのが特に苦手でして……。主人公の叔父・ヴィリバルトと後から登場するユリウスは本当に難しかったです。常にMP……というか精神力を使うので、ちゃんとかっこよく描くために気を抜くことができないという点で苦労しています。

単純に作画の量を増やしすぎてしまった二人でもあるので、漫画で描くとちょっと大変、というのもあります(笑)。「このページ、ヴィリバルトもユリウスもいる……しかも全部のコマにいる!」みたいなときはすごく大変ですね。

中林先生の作画のタイムラプスを特別公開!中林先生が「難しい」と表現に苦労するヴィリバルトの戦闘シーンが描かれていく様子。

作品づくり全体で大切にしていることはありますか?

キャラクターを生きた人間だと感じてもらえるように描くことです。表情を描くのが好きなので、キャラクターが何を思っているのかを表情から感じていただけるように描くことを心がけています。

表情を描くポイントは何ですか?

感覚的になってしまうんですが、そのキャラクターがどういう性格なのかを考えつつ、『こういうふうに生きている人ならこんな笑顔をするかな』、『こんな怒り方をするかな』とイメージして描いています。どう描けばいいかわからなくなったときは、そのキャラクターが生まれてから今に至るまでを考えて描くときもありますね。一から考えているときは気づいたら時間が飛んでいます。それほど夢中になるのだから楽しいんだろうなと自分で思いますね。

作画ではどのようなことを大切にしていますか?

背景もほとんど自分で描いているんですが、世界観が軽くならないようしっかりリアル寄りに描くことは意識しています。あとは、行ってみたい、暮らしてみたいと思っていただけるような世界観にしたいので、夢のある要素を足すなど工夫しています。

作中、魔法がたくさん出てきますが、魔法を絵で表現するのはいかがですか?

どうしたら絵的にかっこいいかな、ということを考えています。誇張したり大袈裟にしたりすることもあって、例えば「炎魔法」と書かれていたら「炎の魔法なら……」と想像を膨らませ派手にしたりしています。

物語が進むと戦闘シーンも多くなりますね。

戦闘シーンも今まであまり描いてこなかったので、勉強しながら描いています。「次はもっと派手にしたい」「こんなアングルで描いてみたい」など、描くたびに発見があって、体力は使うけれど楽しいですね。

ダイナミックに描かれる魔法の発動シーン。魔法の勢いや空気の流れはいくつもの書き込みを重ねて表現されている。また、建物などの背景は細部まで書き込み、世界観にリアリティを持たせている。

最後に、コミカライズ版ならではの見どころと、これから作品を読む方へのメッセージをお願いします。

「最強男」とは言いつつ、主人公が割と壁に当たり続ける展開になるので、そういった部分を少年漫画のように楽しんでいただきたいです。一話でも、一瞬でも、一人でも、好きなシーンやキャラクターが見つかったら嬉しいなと思います。ぜひあいた時間に気軽に読んでいただけたら嬉しいですね。

中林ずん先生、ありがとうございました!